博物館や美術館巡りが好きなブロガーRie(@rieasianlife)です。
今回は、台北にある人形博物館「台北偶戯館」をご紹介。
たまたま近くを散策していたら見つけて入ってみたんですが、台湾の歴史や伝統文化に触れることができて思った以上に面白かったです・・・!
台北偶戯館ってどこにあるの?どんな施設?
台北偶戯館の外観
台北偶戯館は、1998年に台原芸術文化基金会の董事長林経甫氏が数十年に渡りコレクションしていた人形を台北市政府文化局へ寄贈しできた博物館。
外観はこんな顔のついたピンクの壁の建物。
「南京三民」駅から徒歩10分、「松山誠品書店」から徒歩5分ほどの場所。
バスで行かれる場合は、669に乗って「復盛京華」で下車かすぐ裏にある「京華城」というショッピングセンター行きのバスに乗ると近いです。
入り口は2階へ
台北偶戯館の入り口
このガラス張りの二階が台北偶戯館です。
台北偶戯館のキャラクター(青い人形)のいる階段を登って二階へ行きましょう!
ちなみに階段の壁にも人形劇の歴史説明がありますよ。
無料のロッカー
二階に上がって左側に行くと無料の鍵付きロッカーがあります。
荷物が多い方はこちらへ荷物を預けて、身軽に見学をお勧めします!
台北偶戯館のインフォメーション
入ってすぐ右手にあるインフォメーションでチケットを購入します。
台北偶戯館の価格表
入場料は以下。
- 大人:50元
- 学生、軍人、公務員など特別待遇の方、団体客:40元
- 復盛里の市民:25元
- 6歳以下の子供、65歳以上の高齢者、55歳以上の原住民、身体障害者など:無料
20名以上で予約をすると、中国語だとは思いますが、無料でガイドもしてくれるようです。
また、50名以上ですが、劇団を呼んで人形劇もしてくれるようです。
詳しくは公式サイトをご参照ください。
台北偶戯館のチケット
チケット購入、左側の入り口からいざ館内へ。
ちなみに、インフォメーションの近くには、少しですが書籍や人形などお土産も売ってあります。
そして、なんと、この人形、安いもので300〜400元程度で購入できる・・・すごい安いんです。
私が行った時もちょうど外国の方が人形購入されてました。
それでは、いよいよ館内へ!
故宮博物館に原画がある人形で遊ぶ子供達の絵「歲朝歡慶圖」
中には、人形に関する歴史的な資料や物語、実際に使われている人形などが展示してあります。
館内はフラッシュを焚かなければ撮影OKです。
皮影戲で使われる皮人形の現物「皮影戲偶頭」
こちらは、牛皮でつくられた皮人形。
和太鼓の皮と同じような、薄くなめした牛皮を使って、切り抜き、色付けして出来上がるうすーい皮人形は、影も綺麗です。
館内は大きく4つのエリアにわかれていました。
- 袋袋相傳(布袋戲エリア)
- 絲絲入扣(傀儡戲エリア)
- 影影約約(皮影戲エリア)
- 特別展示エリア
一つ一つ紹介していきます!
袋袋相傳(布袋戲エリア)
廟會風の人形舞台「金光戲台」
館内に入るとすぐにあるのは、「布袋戲(ぶだいし)」のエリアから。
こんな台湾の廟會風の舞台「金光戲臺」で展示してある人形もあります。
蛍光ライトに照らされて、蛍光色で装飾されたこのド派手な舞台は、人の注意を引くためにこんな色になりました。
また、組み立てが簡単にできることから色んな場所で公園が可能です。
よくお寺の神様の誕生日や中元節の時などにお寺の目の前に出現します。
肩擔戲台の様子
文献の中で人形劇の由来は、中国の大江南北地方で始まったこんな箱を被った状態の「肩擔戲台」がはじめとされています。
そもそもどうして「布袋戲」という名前になったのか諸説あるのですが館内で由来が4つ紹介してありました。
由来(1)使用していた人形は東部と手と足と下半身以外の体の軸や上半身など全て布でできており、形も四角い布袋に似てるので。
由来(2)演劇が終わった後、人形を布の袋に入れて運んでいたため(現在は木の箱に入れている)。
由来(3)演技をする時、人形を舞台下の布袋に入れるため。
由来(4)初期の演技演出の時の機材の形が大きな布袋に似ていたため。
どれが本当の由来なんだろう?
壽星、福星、祿星
これは布袋戲の定番の3人の神様人形「壽祿福三仙」で、左から
- 壽星(そうせん)The God of Long-lived 長寿の神様
- 福星(ふーせん)The God of Good Fortune 富の神様
- 祿星(りゅーせん) The God of Wealth 子孫の神様
「三仙會(さんせんほい)」という物語で登場する神様。
実際に使われていた劇の台本や楽譜。
公演場所と日付などが記載されています。
現在、台湾の布人形(布袋戲)には「霹靂布袋戲」と「金光布袋戲」の2種類があります。
霹靂布袋戲は、仏教や道教などの物語に幻想的なものを加えた物語が多く、金光布袋戲は、将軍の物語などがメインらしいです。
また、布袋戲の人間国宝「陳錫鍠」師傅のストーリーがビデオで流れています。
↓は、2012年のTEDxTalksの時の動画。
5分あたりから実際に陳錫鍠さんが演技をしているシーンがみれるんですが、この動画見た瞬間、鳥肌ものでした。
特に人形の手の動きが本当にすごい!
人形がセンスを開いたり、髪の毛をといたり・・・ほんとに人形に命が宿ってるみたい・・・。
一度でいいから生で陳錫鍠さんの人形劇を見てみたい・・・!!!
陳錫鍠さんとその父であり師匠でありライバルでもある「李天祿」との関係を10年かけて撮影したドキュメンタリー映画「紅盒子」もあります。
日本では「台湾、街かどの人形劇」というタイトルみたいです。
三国演義の人形たち
台湾は1937年7月から始まった台湾総督の小林躋造が宣言した台湾統治三大原則「皇民化、工業化、南進基地化」に伴い、伝統的な演目は禁止され、鑼鼓(ドラ)や嗩吶(チャルメラ)などの楽器を使うことも禁止されました。(禁鼓樂)
その間、布袋戲の公演は一時的に中断したらしいです。
その2年後、長谷川清が小林に注いで台湾の総督になったところ「皇民化運動」を推し進め、「皇民奉公会」が立ち上がりその中にできた「娯楽委員会」の働きかけによって、台湾伝統芸能だった民間戯曲は全て日本化されていきます。
皇民化時代の人形
この人形は日本統治の「皇民化」時代のもの。
伝統的な中華風の服ではなく、日本の着物風の服を着せられています。
太平洋戦争勃発により、日本政府は全面的に漢民族を日本人化し始め、全面的に中国の演目を禁止しました。
ただ、「皇民奉公会中央部娯楽委員会」の委員は、布袋戲を「正常な娯楽」とし、題目や台本、音楽、言葉など全ての要素を全てを皇民化していきました。
その時音ルールがいくつか紹介されていました。
- 伴奏は西楽または声で行う
- 服装は日中混合のものとする
- セリフは台湾語で可能だが、日常的な言葉は日本語または日本語の説明を入れる
- 舞台装置は、平面ではなく立体化したものにする
政府官僚が見る公演の場合、演目は日本武士道をテーマにするなどの要望もあったようです。
また日本時代は爆竹や開始の時に言う祝詞も禁止されたそうです。
反共抗戦時代の人形
こちらは228事件が起こった頃の反共抗戦時代(共産党に対する抵抗)のもの。
伝統的な中華のきらびやかな衣装とは打って変わって、プロパガンダ的な服装。
この時代の雰囲気が伝わってくるようです。
布袋戲の体験ブース
ここでは自由に布人形を体験するブースもあって、子供や大人、外国人の布人形など実際に操作してみることができます。
自分たちで指を入れてみてびっくり、すごく難しい!!
手の動きや頭や体の動きを使って表情が変わらない人形の心情を表現するのが本当に難しかったです。
民国70年(1981年)に作られた道士の服!
太極のマークがすごく素敵!!!
田都元師と西泰王爺
また、様々な伝説もあります。
田都元師という芸術の神様「戲神」の演目をしている時、劇団が公演中に田都元師を田んぼに落としてしまった時にカニが泡を出して人形を救ったという逸話から公演中は決してカニを食べないという逸話。
女性は、布袋戲に参加してはいけなかったり(現在は可能)禁忌。
絲絲入扣(傀儡戲エリア)
生、旦、淨、末、丑、童、雜、獸のあやつり人形
こちらのブースは「傀儡戲(くいれいし)」という糸で吊られたあやつり人形の展示エリア。
布人形だけでなく、台湾にはあやつり人形もあります。
中央にある7体の「生、旦、淨、末、丑、童、雜、獸」の人形は、いろんな役割や年齢などを担っており、この7体で60種類以上の役をこなすので「六十角」と呼ばれているそうです。
「傀儡戲」は「嘉禮戲」とも呼ばれており、南北で演目が違うそうです。
共に、信仰や習慣をテーマにした内容ではありますが、南部はどちらかというと喜ばしい儀式や祈りが多く、北部では天災や邪気を払うものが多いそうです。
- 南部の物語:童子戲球、尪某對など
- 北部の物語:桃花女鬥周公など
あやつり人形体験コーナー
あやつり人形のブースにも体験コーナーがあり、こんな可愛いミニ獅子舞や龍を動かすことができます。
指人形の時同様に、すっごく難しくて、まったく思ったとおりに動いてくれませんでした笑
影影約約(皮影戲エリア)
様々な皮影戲
あやつり人形エリアを抜けると紙や動物の皮でできた「皮影戲(ぴーいんし)」のコーナー。
台湾では「皮猴戲(ぷえがおひ:皮尪仔)」とも呼ばれているそうです。
皮影戲の由来は、2つあります。
中国漢朝時代、漢武帝が先立ってしまった妻の妃子李夫人を恋しく思い、江湖の術師に李夫人の影絵を作らせて治療したという伝説からきているそうです。
軍国旗の皮影戲
もう一つは、漢時代の将軍「韓信」が発明した方法で,兵士たちに影絵を使って敵軍を威嚇撤退させる方法を伝えた軍事的な方法が徐々に娯楽へと変化していったという説。
確かに、戦法を伝達するのに影絵を使うのはわかりやすいですね。
1つ目の伝説のほうが、個人的にロマンチックで好きですが(笑)
軍人の皮影戲
光に照らされた皮影戲は、色が助けて綺麗。
本当人形劇として使うものですが、それ自体がすでに芸術品です。
ほかにもトルコの影人形「卡拉格茲(karagoz)」や中国から東南アジア(インド、インドネシア、タイ、マレーシアなど)へ伝わっていった皮影戲も見ることができます。
特別展示エリア
ちょうどいったこの時は特別展示「一生懸命 黃憲章創作展」があっていました。
黃憲章さんも有名な人形師で木を掘って作ったあやつり人形がたくさん。
台湾の人形だけでなく、こんな西洋的な人形もたくさんありました。
だいたい3ヶ月に1回くらいのペースで展示が切り替わっているようなので、詳しくは人形館の公式サイトをご覧ください。
台北偶戯館へのアクセスと詳細
台北偶戯館(HP、Facebook)
時間 10:00〜17:00(月曜休み)
電話 02 2528 9553
住所 台北市松山區市民大道五段99號2樓
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