美術館や博物館巡りが好きなブロガーRie(@rieasianlife)です。
この秋、台湾のアート好きの中でホットだったイベント「ロマンチック台三線芸術祭(浪漫臺三線藝術季)」。
10月19日〜12月15日までの約2ヶ月間にかけて、台湾を縦に走る公道「台三線」沿いに客家委員会主催で開催された芸術祭でした。
今回は「桃園(龍潭)、苗栗(大湖)」地区をみて回った時のレポート。
ちょっと行きにくいところにあり、チャーターや徒歩が必要になる場所ですが、興味がある方は是非交通手段を見つけて行ってみてください!
ロマンチック台三線芸術祭(浪漫臺三線藝術季)について
写真:公式プレス資料より
他の記事でもご紹介しているので、今回の紹介は簡単に。
ロマンチック台三線芸術祭(浪漫臺三線藝術季)とは、2019年10月19日〜12月15日の期間、台湾行政院客家委員会が主催となり「台北(凱道)」「桃園(龍潭)」「新竹(關西,竹東、內灣、北埔,峨眉)」「苗栗(獅潭,大湖)」「台中(東勢)」の5つの県、10箇所で行われていた芸術祭です。
芸術エリアはこの旗が目印
他のスポットの作品とイベントの様子はこちら
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国内外50名以上の芸術家を招き、客家文化街道「台三線(省道3号線)」で魅力を発信するイベントでした。
今回は、PR会社の方にお誘いいただき「桃園(龍潭)」「苗栗(大湖)」エリアの作品の見学つあーに行ってきました!
作品紹介「桃園」
龍潭エリアマップ(公式サイトより)
まずは、桃園エリアの作品から見学していきました。
各スポットのアクセスはこちらのページをご参照ください。
桃園「龍潭」エリアの作品紹介動画はストーリー形式でした↓
龍潭(ロンタン)三坑老街
三坑老街にあるお寺「永福宮」の外観
まず到着した「三坑老街」は、お茶の中継地点として栄た場所。
150年以上前、このお寺「永福宮」の前に桃園や新竹などのお茶が集められ、台北の大稻埕(今の迪化街)に出荷されて行ったそうです。
桃園市龍潭區三坑子バスで行くなら・・・
1)桃園客運中壢總駅から台灣好行バスにのり「三坑老街」で降りる(祝日のみ)
2)中壢または龍潭搭桃園客運の5050、5055線にのり「三坑」で降りる
林舜龍自ら作品の概要を説明
この地域の歴史的な話と作品の概要を、この地区のキュレーター兼芸術家の「林舜龍」さんがイラストをもとに説明してくれました。
ちなみに、林舜龍さんの作品が後に出てきますが、瀬戸内国際芸術祭でも作品を出されているすごい芸術家です!
永福宮から歩いて、すぐ近くにある初めの作品がこちら!
景山健「與自然共生共有」
田んぼの中に現れるこちらの作品は、日本人の芸術家景山健さんの作品「與自然共生共有」。
作品までの道は竹でできており、その周りにはたくさんの藁(わら)が敷き詰められています。
作品の中の様子
中に入ることもできるのですが、近くで見てやっとわかりました。
これは、全て木製の割り箸!!!!
台湾の割り箸をかき集めて作られているとのこと、それにしてもすごい数・・・!
コスモス畑と作品
またちょうど近くの休み中の畑ではたくさんのコスモスが咲いていました。
生憎の雨模様だったんですが、逆に雨に濡れたコスモスの花びらが透けて、本当に綺麗でした!
普段使っている何気ないものが自然からの贈り物だということやそれと共存することの意味を込められているとっても面白い作品だと思いました。
龍潭(ロンタン)三坑自然生態公園
三坑自然生態公園
次に移動したのは「三坑自然生態公園」という自然公園エリア。
ここには大きめの野外芸術がたくさんあります!
桃園市龍潭區三坑里行き方・・・
三坑老街から歩きましょう!
林舜龍、王昱翔「稻之蛹」(公式プレス資料より)
時間があまりなく、遠くからしか見れなかったのですが、みの虫が木から下がっているような、ぽってりとした作品は、林舜龍さん、王昱翔さん合作の作品「稻之蛹」。
人が座っても大丈夫なくらいしっかりと作られており、ちょうどこの時、第一陣として先にいったグループは中で猫が雨宿りしていたシーンに遭遇したそうです。
私も見たかったー!!!
林舜龍「年輪下,細說樟之細路」
この一際大きい木でできた作品はキュレーターとして説明もしてくださっていた林舜龍さんの作品「年輪下,細說樟之細路」。
この作品は樟脳の木と鋼板でできており、大きな一つの古い樟脳の木をイメージしているそうです。
中に植えられている樟脳の木
この作品の中には「樟脳の苗木」が植えられていおり、苗木が天井まで届くくらいまで大きくなることで生命力を表現。
作品の中にある石
中心には守り石が置かれており、外側と内側に1枚ずつトンボの羽がああしらわれています。
石は土地の象徴、羽は天空の象徴、年輪は時間の象徴とのこと。
一つ一つに意味があり、かつそれ全てがつながっている作品でした。
作品の説明をされている林舜龍さん
また、この作品の中にはたくさんの「棚」が用意されています。
この棚は地域の方々が休憩にきた時に、物を置けるようにと用意されたそうです。
景山健「年輪下,細說樟之細路-水琴窟」
この作品も最初に紹介した割り箸の作品を作られた芸術家景山健さんの作品「年輪下,細說樟之細路-水琴窟」
周辺の方々の休憩の場所としても使っていただけるように、椅子になっています。
作品に空いている穴
この作品の名前は「水琴窟」。
水琴窟(すいきんくつ)とは、実は日本の古くからある日本庭園に使われる装飾和楽器の一つ。
この穴に耳を近づけると「コポコポ、ぽちゃぽちゃ」という水流の音が聞こえてきます。
自然の単純な水の音なんですが、とても癒されました。
いろんな作られた音がある現代において、自然の音ってこんなに癒し効果があるんだなぁと実感。
ずっと聴いていたかったです。
水内貴英「浮草庵-從湖上觀望」
湖の上のこの作品は、日本人の芸術家水内貴英さんの作品「浮草庵-從湖上觀望」。
この作品は、湖の上に浮いています。
中の茶室の様子(公式プレス資料より)
浮草庵という名前の通り、中央にあるのは、なんと茶室。
湖上の茶室では、人は公平性でかつ対話という儀式を行うとして、水內さん自らここでお茶を入れて振舞うイベントも行われたそうです。
確かに、この茶室の形から千利休の閉ざされつつも開放された、入る人全てが平等な空間を感じました。
龍潭(ロンタン)大平エリア
林舜龍「家的記憶風景」
龍潭エリアの最後にやってきたのは、説明をしてくれたキュレーター兼芸術家の林舜龍さんの作品「家的記憶風景」。
桃園市龍潭區永平路80號
この作品は思い出がたくさん詰まった作品。
桃園の馬祖新村眷村の取り壊された家々から集めてきた窓で作られています。
作品の説明をしてくれた林舜龍さん
この作品は、まだ制作中。
「今からこのガラスを埋め込むんだよ」と見せてもらいました。
書かれていたのは、馬祖新村眷村の村長さんの記憶をガラスに描いたもの。
床は畳模様のガラス
林舜龍さんは、是非、中に入って外の景色を見て欲しいと言われていました。
中から様々な人の生活を見守った窓を通して、彼らの生活を覗いてみて欲しい、だからこの作品のタイトルは《家的記憶風景》なんだよと。
なんて素敵な作品・・・!
作品を紹介する林舜龍さん
このドアは開くんだよ!と楽しそうに家の周辺のドアを開けてくれました。
また夜はこのドアの下のライトがつくそうです。
可愛いいだけでなく、その説明を聞くと、みるだけで一つ一つのレリーフから人の温かみを感じるそんな作品でした。
作品紹介「苗栗」
大窩エリアマップ(公式サイトより)
続きまして、今度は苗栗大湖の大窩へ移動、大窩には山の中にある作品がたくさんあります。
大窩エリアへのアクセスはこちらを参照にされてください。
ちなみにイベント期間中は連絡バスが出ていましたが、現在は車でしか行けませんので、乗り合いやチャーターの手配をお願いします。
↓作家さんの紹介映像もかっこいいです♪
大窩(ダーオウ)大窩生態園區
翁以涵「奉茶惜福」
この竹林の中の作品は、陶芸家翁以涵さんの「奉茶惜福」という作品。
客家のお茶文化の中に、家の前にお茶セットと椅子を置いて通りがかりの旅人をもてなすという文化があります。
この作品は、そんな道ゆく人々をもてなす意味が込められているそう。
白い砂の上に並ぶ手作りの陶器
この作品は翁以涵さんと大窩の住民たちと一緒に作り上げた作品で、たくさんの茶器やお皿はその住民たちとワークショップを開いて作られたそうです。
手作りの茶碗はお客様を歓迎するという意味、器から流れ出る白砂は、渓谷の流れと大窩の無数の生命、また水の源である客家の精神と世代の継承を意味しているそうです。
可愛らしいたくさんの陶器は、いろんな方の心が込められており、そこにはワイワイ楽しい音楽が流れているようなそんな雰囲気でした。
伊祐嘎照「生命的鑿痕」
この作品は伊祐嘎照(Iyo Kacaw)さんの「生命的鑿痕」という作品。
伊祐嘎照さんはアミ族出身の芸術家で木を使った作品を作られている方。
作品のすぐ下には小川が流れており、以前この周辺の開拓者たちは、この川の水を引くために斧で開拓をしていった場所です。
作品の上には葉っぱのような造形が
この作品のタイトルは「生命的鑿痕」。
人の命は種と同じ、川に流され、風に飛ばされ、落ちた場所がどんな環境であれ、種は場所をさがし栄養を吸い、発芽する。
この地域を開拓した方々の精神を象徴しているそうです。
作品の内部
作品の内部はこんな感じ。
椅子がおかれ、周辺の方々の休憩所として使えるようにしてあります。
この写真の左側に写っている机は、実はもともと作る予定はなかったんですが、最後の日、伊祐嘎照さんが周辺住民がお酒を飲めるように急遽、机を作ったそうです。
素敵なエピソードですね♪
范承宗「茶窩」
「生命的鑿痕」から少し丘を登った場所に現れる作品は范承宗さんの「茶窩」という作品。
高さ2メートルはある大きな藁を組んだ丸い作品と、1メートルほどの小さな作品の2つ。
茶窩の説明資料
茶窩とは、伝統的な保温道具。
藁で組んだ丸いカゴの中は、布が貼られており、お湯を沸かしたヤカンなどを中に入れて、冷めないようにするための道具。
個人的に普通にこれ欲しい(笑)
作品の中にある休憩室
大きい方の作品は中に入って座って休憩することができます。
覗き穴もあり、これは中から外を覗くためのもの。
中からの様子
雨だったので、中に入れなかったのですが、晴れた日は、日陰になり気持ちがいい空間になりそうです。
安聖惠「編織記憶」
この大きな木の下に現れる真っ白な作品は、泰雅(タイヤル)族の芸術家安聖惠さんの「編織記憶」。
編み込まれているロープ
家族で一本一本ロープを編んで作ったそうです。
かなり強くて太いロープを使って編んであり、編むのに相当の力を使うそう。
曲線をたくさん使われた作品
この曲線と円を組み合わせた模様が本当に美しい・・・。
乗ることもできます
すごく強い作品なので、上に乗ることもできます。
天気の良い日だとハンモック気分でお昼寝もできるそうです。
土地神様「土地公」の祠
またこの作品の目の前には小さな土地神様「土地公」の祠があります。
この土地神様は周辺住民から大事にされている祠で、昔は囲いがなかったらしいのですが、現在には立派な囲いの建物ができて掃除されて常に綺麗な状態を保たれています。
この台三線イベントを行うにあたり、この土地神様にもお参りをし、開会イベントの招待状もお供えして招待したそうです。
おまけ
温泉旅館「湯神会館」
苗栗の大湖地区に行く前にみんなでお昼ご飯を食べました。
大湖地区は台湾ではイチゴの名産地として有名な町。
ホテルに行く道では、いちご畑がたぁーーーくさん!!!!
残念ながらまだ収穫時期ではなかったですが、1月ごろになると道路が真っ赤に染まるのではないかと思うくらいいちご畑だらけでした。
湯神会館の温泉
イチゴの町「大湖」には温泉も沸いています!
立ち寄った場所は「湯神会館」という温泉に入れる旅館ホテルでした。
苗栗縣大湖鄉大寮村大窩1-10號
湯神会館で食べた客家料理
そこで食べれるのは客家料理のフルコース!
新竹の客家料理はよく父の家に行くので比較的食べ慣れていたのですが、苗栗の客家料理は少しだけ種類が違うように思えました。
こちらもとっても美味しかった!!!
森の中に無数ある水道洞窟
国立苗栗高級農工職業学校の先生をされていた木材の専門家彭宏源先生に近くの森も説明していただき、作品までの経路を案内してもらいました。
洞窟の中の様子(公式プレス資料より)
この狭い洞窟は、客家の方々によって開拓時に「手で」掘られた水道洞窟。
今でも数カ所残っているそうです。
感想
茶窩の説明をされている彭宏源先生
今回、直接キュレーターの方々に説明を受けながら作品見学できたことで各作品理解がかなり深まりました。
作品だけでなく、その作品を作るまでに苦労や経緯、その土地の歴史も知ることができ、本当に良い機会と体験になりました。
特に、彭宏源先生がおっしゃっていたことで、この土地「苗栗」は、原住民と客家人が共存している場所。
客家人が開拓する際に、様々な悲しい衝突もありました。
でも現在は、共に共存し、今回のイベントにより客家人と原住民が一緒になって作品を作り上げていることにとても意味があるんだとおっしゃっていました。
作品の前で集合写真(写真はPR会社の方より)
また、今回のツアーでは、「ベネッセアートサイト直島」の仕掛け人でもある秋元雄史先生も一緒に見て回りました。
秋元先生は、東京藝術大学大学美術館館長などを務められており、様々なアートプロジェクトを成功させている方。
ロマンチック台三線芸術祭は、秋元先生が主体となり成功させた「直島プロジェクト」のように台三線も盛り上げていきたいという思いもあり開催された実は日本ともかなり関わりが深いイベントなのです。
北埔老街も見学しました(写真はPR会社の方より)
最初は写真で見ると厳しそうですごい方だったので、緊張していたのですが、本当に気さくな方でワイワイと楽しみながらみんなで見て回りました。
また、以下、作品を見た秋元先生の公式発表文章もいただきました。
広大な領域に広がるアートサイトは魅力的である。
台湾の風景、歴史、それに人々の暮らしを現代アート作品を通して見ることができる。これは単なるアート展を超えて、アートによる新たな台湾の文化の創造行為でもある。
台湾にはたくさんの土地がまだまだあります、そこは人があまり踏み入れていない森の中や農業や林業が発達している田舎町。
そこで地元の方々(人)と自然とが一緒になって作り上げるアートは、視覚だけでなく感情も動かすものばかりで、本当に素晴らしかったです。
今回、プロの主催側の方々の観点から作品を見て回れたのは本当に貴重な体験でした。
またこの日の夜、各地のキュレーターたちが集まる交流会にも参加させていただきました!

一部ですが、芸術祭が終わっても引き続き展示することが決まっているので、期間中に行きそびれた方でも大丈夫です。
現在でも残っている作品
保留作品:《浮草庵—從湖上觀望》、《家的記憶風景》、《稻之蛹》、《年輪下,細說樟之細路》、《細說樟之細路—水琴窟》
保留作品:《茶窩》、《編織記憶》、《生命的鑿痕》、《奉茶惜福》
興味があれば、各運営委員会のFacebookや公式サイトがあるので、わからない時は聞いて行ってみてください!
この時に同行された鏡週刊の番組がアップされていたので、追記。